不動産管理会社はM&Aで譲渡できる?宅建業法による規制は?会社売却の際に知っておきたいM&Aと業界知識

query_builder 2021/12/02
M&A・事業承継
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最近では不動産管理会社がM&Aでよく取引されています。
しかし、M&Aの手続きの流れや、費用・相場など、細かい点まで知っている方は多くありません
この記事では、M&Aによって不動産管理会社を譲渡・売却したいと考えたとき、経営者が知っておくべきポイントについて解説しています。
不動産管理会社のM&Aを検討する際にはぜひ参考にしてください。

不動産管理会社業界について

不動産管理会社の業務と業界の現状

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不動産管理会社とは、あらゆる方面から不動産運用の手助けをする会社です。
不動産を所有しているだけでは利益があがりません。
賃貸するなど運用することで初めて収入の獲得が見込めます。
しかし、そのためには、入居者の募集や、不動産のメンテナンスが欠かせません。
ですが、投資家やオーナーが自分で所有する不動産をすべて自分の手で管理するのは難しいでしょう。
そこで、不動産管理会社がサポートして、不動産を適切に運用できるようにしています
なお、不動産管理会社は不動産仲介会社を兼任していることが少なくありません。
しかしながら、この2つは違うものです。
仲介会社は入居者と不動産所有者との間に立ち、不動産の賃貸借を仲介する仕事です。
不動産の管理や運用はしません。
不動産仲介業者となるためには、宅建(宅地建物取引業)免許の取得申請が必要です

不動産管理会社の業界動向

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不動産管理業界は、土地や建物など不動産への投資が増えるほどに、成長します。
管理を必要とする物件が増えるからです。
一時はアメリカのサブプライムローンが引き金となったリーマンショックによって、日本の不動産投資も影響を受けたため、不動産市場自体が縮小してしまいました。
しかし、リーマンショックから10年以上過ぎた後では、その影響はまったく見られなくなったといえるでしょう。
それどころか、東京オリンピックをきっかけに、不動産投資はさらに盛んになりました。それにともない、不動産管理業界は順調に成長を遂げています。

#不動産管理業界の会社数の推移
不動産管理業の会社数の推移をみてみましょう。
公益財団法人不動産流通推進センターが発表している「不動産業統計集」によれば、不動産管理業は2009年で約4.3万件、2014年に約5.1万件と増加傾向にあったものが、2016年では約3.9万件に減っています。
これを見て、不動産管理会社の業界が衰退しているのではないかと心配する人もいるでしょう。
けれども、この下落は不動産管理会社への需要の伸びが大きくなり、競争が激化したことがその一因と考えられています。
不動産管理の業界は、需要の増加によって、サービスの多様性や差別化が求められているからです。
それにともない、企業成長や新しいサービスの開拓のために、不動産管理会社の事業買収やM&Aが積極的に行われるようになっています。
とりわけ、地域密着型の中小不動産管理会社はM&Aによる統合が増えています

#地域密着型の不動産管理会社のM&Aが増えている理由
多くの地域密着型の産業は、経営者の高齢化と事業を継続する後継者不足の問題を抱えています。
中小企業庁が発行する「2018年版中小企業白書」によれば、中小企業経営者の高齢者割合は高まっています。
2015年には、経営者年齢のピークは66歳になりました。
しかし、その企業の半数ほどで、事業を引き継ぐ後継者が決まっていません。
これは不動産管理会社でも共通しており、事業を引き継ぐ者がいないため、M&Aによって会社を手放す経営者が増えています。
また、2020年に入ると新型コロナウイルスが流行したことを機会に、M&Aを検討する不動産管理会社の経営者も増えました。

不動産管理会社のM&Aについて

不動産管理会社のM&Aによるメリット

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不動産管理業界が成長しているといっても、M&Aによって本当に不動産管理会社が売れるのか疑問を持つ人も多いでしょう。
特に、地域密着型の不動産管理会社は、事業規模が小さいため「M&Aの対象にされないのではないか」という心配を持つ人もいます。
ですが、その心配は不要です。なぜなら、不動産管理会社のM&Aは積極的に行われているからです。
地域密着型の不動産管理会社も高い人気があります
その理由は、不動産管理会社のM&Aは、買い手側に多くのメリットが与えるからです。

#人材の確保が簡単
不動産管理会社の業務は、有益な人材の確保が欠かせません。例えば、不動産管理会社が賃貸仲介や売買をサービスとしてするには宅建免許が必要です。
しかし、資格や免許を社員に取得させるのは大変です。
M&Aで会社を購入すれば、その会社で働く人材の確保ができるため、有資格者など有益な人材の獲得が簡単になります。


#新規開拓せずに業務エリアを広げられる

M&Aで会社や事業を手に入れると、それと一緒に、顧客や業務エリアを手に入れられます。

まったくの新規開拓で顧客を手に入れるのは大変な作業ですが、M&Aを利用すれば苦労する必要がありません。

都心ですでに不動産管理業をしているなら、周辺地域や地方の不動産管理会社を手に入れることで、いっきに営業エリアを広げられます。

エリア開拓や顧客確保が理由のM&Aはとても多いです

また、M&Aで手に入れようとしている会社が、大手や有力企業と取引している場合、その取引を継承することも可能です。


#サービス範囲を広げられる

不動産管理会社が急に仲介業や売買をサービスとして始めたとしても、そう簡単には成果を得られません。

サービスを広げるためには、ノウハウが必要といえるからです。M&Aで会社や事業が手に入れられれば、ノウハウを手に入れられます。

現在持っている強みと、M&Aで手に入れようと考えている会社との間で、シナジー効果も期待できます。


#会社の規模を大きくできる

会社の規模を押上げ、地元で一番の企業になれば、それだけ優位に経営ができる場合が多いです。そのために、競合他社をM&Aで手に入れることは珍しくありません。また、地域のライバル会社を手に入れてしまえば、そのエリアでの業務を全て手に入れられるので、経営地盤が強くなります。

不動産管理会社をM&Aで売却・譲渡する際の相場は?

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2019年のデータでは、不動産管理会社の企業価値評価は、もちろん会社の運営形態にもよりますが、営業利益に償却費類を加えた額面の6から8倍でした。
この企業価値評価を基準にすれば、譲渡や売却価格の相場の推測が立てられます。
ただし、不動産管理会社の譲渡価格の相場は、いつでも企業価値評価通りになるとは限りません。
なぜなら、不動産管理会社の相場は、不動産マーケットの勢いに左右されやすいからです


不動産管理会社は管理戸数が多い程に安定的な収益が得られます
そのため、不動産マーケットが活況の時期には、譲渡価格が高く推移しやすくなります。
管理戸数が多くなるためです。
一方で、不動産投資が下火になると、不動産管理会社は管理戸数が減るため、譲渡価格が下がります。
M&Aを考えているのなら、管理戸数は増やしておいた方がよいでしょう。
管理戸数のほかにも、譲渡価値を上げる要素はあります。
例えば、管理している物件の多くが集まる地域が、人気エリアである場合は、譲渡価格の上昇も考えられるでしょう。
また、資格保有者が多数在籍している不動産管理会社は、その価値が高く評価されることがあります。

不動産管理会社のM&Aの費用と手続き、注意点

M&Aで不動産管理会社を売却・譲渡する際の費用

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M&Aはどれだけ企業法務や売買に詳しい人であっても、M&A専門の仲介会社の手助けを受けるのが一般的です
M&A専門の仲介会社に支払う手数料は主に、着手金・中間金・成功報酬の3種類からなります。

#着手金

着手金は実際にM&Aの仲介を正式に依頼した場合に発生する費用です。着手金はM&Aの成否にかかわらず発生します。近頃では、着手金の相場は100万円から200万円ほどです。近年では、着手金無料の仲介会社が増えています。

#中間金

M&Aの仲介を進めていき、基本合意書締結段階に進んだ場合、その時点で中間金を支払うのが一般的です。
中間金とは、仲介契約成立の後、仲介先との手続きを終了させるまでの間に、成功報酬の一部から支払われるお金のことです。
不動産管理会社のM&Aでは、成功報酬の20%ほどが相場であるとされています。
なかには、中間金を請求しない仲介会社もあります。

#成功報酬

M&Aの仲介が成功し、最終契約書を締結した後に支払うお金が、成功報酬です。
中間金を支払っている場合には、その分を差し引いた額を支払います。
例えば、成功報酬の2割を中間金として支払っているなら、残りの8割を成功報酬として支払います。
成功報酬は、M&Aでの取引価格によって決まることがほとんどです
以下に、レーマン・テーブルによる成功報酬例を示します。


取引金額 報酬率
5億円以下 5%
5億円超から10億円 4%
10億円超から50億円 3%
50億円超から100億円 2%
100億円超 1%

#司法書士に支払うべき報酬

M&Aで会社を譲渡や売却したときには、会社の各種登記事項を変更しなければなりません。
この手続きを司法書士に依頼すると、司法書士への報酬と登録免許税がかかります。
司法書士報酬は、10万円ほどから設定されている場合がほとんどです。
司法書士への報酬と登録免許税の支払いは、譲受会社が負担するのが一般的です。

不動産管理会社をM&Aで譲渡・売却する際の手続き

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M&Aの手続きは、主に3つの段階に分けられます
1つ目が「検討・準備」の段階、2つ目が「マッチングおよび交渉」の段階です、3つ目が「最終契約書の締結」です。M&Aの手続きは複雑なため、この3つの段階を仲介業者と二人三脚ですすめていくことになります

#相談・検討の段階

M&Aの手続きに入るまえに、M&Aによる譲渡や売却が必要であるかどうかを検討します。
まずは、自社の状況把握です。
正確な債務の把握だけでなく、特許やノウハウといった自社の強みも明確にして、整理しておきましょう。
次に、M&A仲介会社選びに入ります。
仲介会社に連絡を入れると、担当者による面談が始まります。
面談で主に行われるのは「ヒアリング」です。
譲渡予定会社の事業内容や財務内容、どのように運営されてきたか、譲渡に対して希望はあるか、などの情報が尋ねられます。
仲介を依頼する会社が決まったら、その会社と「アドバイザリー契約」の締結をしましょう。
なお、ほとんどのM&A専門仲介会社では、この段階で、M&A仲介会社のサービス内容や範囲・報酬割合を決めます。
また、契約の性質上、秘密保持契約が規約に定められることも少なくありません。
アドバイザリー契約締結後、決算資料・財務資料・事業資料といったものを仲介会社に提出します。
M&A仲介会社は、これらの資料をもとにして、譲受候補先企業に開示する資料を作成し、候補企業の選定を始めます。

#マッチングおよび交渉の段階

この段階で最初に行われるのが「ノンネームシート」あるいはTeaser(ティーザー)と呼ばれる事業概要書の作成です。
これは、譲渡希望会社が特定できない範囲で、事業内容や財務内容を大まかにまとめた資料です。
M&A仲介会社が、譲受候補先企業にM&Aを打診するために使います。
譲受希望する会社には、「IM(インフォメーション・メモランダム)」が開示されます。
これは企業概要書とも呼ばれている資料です。ノンネームシートよりも詳細な会社情報がまとめられています。
この資料が開示されるには、譲渡希望の会社側の開示意思確認(ネームクリア)が必要です。
ノンネームシートおよびIMに目を通し、具体的にM&Aを検討する段階に入ったら経営者同士が顔を合わせる「トップ面談」をはじめます。
トップ面談は、事業概要書からは判別できない事業内容への疑問や経営状況などが尋ねられます。
なお、M&Aの成約に不利な情報であっても、譲受希望先には伝えておくことが大切です。
隠していた情報が後に明るみに出た場合には、それが破断の理由となるかもしれないからです。
トップ面談を通して、M&Aの条件がある程度決まったなら、「基本合意書の締結」へと移ります。
基本合意書は、M&A当事者の認識を一致させるために作成する書類です。
条件などを整理して、M&Aを終了までのスケジュールや、譲渡・売却価格といった内容を定めます。
基本合意書には「デューデリジェンス(DD)をする権利」「独占交渉権の付与」が盛り込まれることが多いです。
デューデリジェンスとは譲受希望会社側が譲渡希望会社に対する調査活動のことで、財務や法務といったさまざまな角度から調査します。
独占交渉権は、デューデリジェンスの調査期間中を含め、意思決定するまでの一定期間の間は、譲渡希望会社が他の譲受先と交渉しないという取り決めです。

#最終契約書締結の段階

最終契約書は、基本合意書の事項に、デューデリジェンスの結果を盛り込んで作定されます。
最終契約書の名目は、M&Aの手法によって変わります。
手法が株式譲渡の場合は株式譲渡契約、合併のときは合併契約です。
なお、基本合意書とは違い、最終契約書には法的効力があります。
契約を結んだ内容に違反すれば、損害賠償請求されることがあるので、注意しましょう。

不動産管理会社のM&Aで注意したいポイント

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不動産管理会社のM&Aでは、その性質上、他業種とは違う問題が起きることがあります。M&Aをスムーズに進めるためにも、よく注意しておきましょう。

#宅建免許の取り扱いに注意
もし、譲渡・売却予定の不動産管理会社が、宅建免許が必要な範囲の業務をしていた場合には注意が必要です。
株式譲渡した場合と事業譲渡では、宅建免許の取り扱いが異なるからです
M&Aで事業譲渡しただけでは当然に宅建免許を引き継ぐことはできません。
もし、譲受企業が宅建免許を持っておらず、M&Aを済ませた後に宅建免許が必要な仕事をしたいのであれば、新たに譲受会社が宅建免許取得の申請をしなければなりません。
事業譲受会社が宅建免許を取得しているなら、再度免許を申請することなく、事業を継承できます。
対して、株式譲渡をした場合には、譲渡会社の株主が変わるだけです。
事業をする会社に変わりはありません。
そのため、宅建免許に影響はなく、新たに免許を申請する必要はありません。

#管理組合には注意が必要
もし、管理している物件のなかで、関係性が悪くなっているものがある場合には、M&Aの後にもトラブルを引きずる可能性があります。
不動産管理の仕事を滞りなく進めるには、各物件の管理組合の協力が欠かせません。
この関係性が悪化していると、事業譲渡や売却をきっかけに、管理費用の減額や、不動産管理会社の変更を求められる場合があるからです。
M&Aを考えているなら、管理組合との関係性を良好に保つように配慮しましょう。

まとめ

不動産管理会社はM&Aで譲渡・売却できる!ただし、慎重に取引しよう

point (2)

不動産管理の業界では、人材の確保や営業エリアを広くできるというメリットから、M&Aが盛んになっています。
その流れは、地域密着型の不動産管理会社にまで及んでいるので、会社の譲渡や売却を考えている人にはチャンスではないでしょうか。
ただし、M&Aには専門的な知識が必要です。
M&Aで事業の譲渡・売却をするときは、専門の仲介業者の手を借りながら、慎重に取引をすすめるようにしましょう。

これまで、会社譲渡・事業承継の手続きの流れとイメージを解説してきました。
安心して会社譲渡・事業承継を行うには、相性の良いM&A仲介会社に依頼することが重要になってきます

弊社もM&A支援機関として、中小企業さまの会社譲渡・事業承継のご支援をさせて頂いておりますので、お気軽にお電話もしくはお問い合わせフォームよりご連絡頂けますと幸いです。

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