会社譲渡・事業承継の手続きの流れと費用を完全解説。全体のイメージが掴めます。

query_builder 2021/11/28
M&A・事業承継
表紙 (3)

この記事では、後継者不在などの理由で、会社譲渡・事業承継をお考えの経営者様に向けて、会社譲渡・事業承継の手続きの流れと譲渡に係る費用を完全解説させて頂きます。
この記事を読んで頂ければ全体的なイメージが掴んで頂けるかと思います。

会社譲渡をするとどうなるか

創業者利益の享受

hope

会社譲渡を行う際は、会社の株式や事業に値段をつけて譲渡を行うことになるのですが、会社の保有する現金や事業資産の価値に加え、営業権の価値を算定し(いわゆる、のれん、と呼ばれているものです)、のれん分を上乗せした金額で譲渡することが一般的になります。

価格の算定方法は、さまざまありますが、中小企業様の事業承継シーンでは、

ネットキャッシュ(*1)または時価/簿価純資産額+EBITDA(*2)×数年分

をたたき台として、条件交渉に入るケースが多いです。

(*1)ネットキャッシュ:現金及び預金残高-有利子負債残高
(*2)EBITDA:営業利益+減価償却費

会社を運営されていらっしゃる状態のときは、会社が産み出す利益の一部を役員報酬として受け取っていらっしゃる状況かと思いますが、株式を譲渡した際には、オーナー様が保有していらっしゃる株式に会社の数年分の利益額がつくため、役員報酬などでは受け取り得ない、かなりまとまった金額を手にされることになります。

こちらが会社譲渡・事業承継における創業者利益となり、会社を譲渡する際のオーナー様の大きなメリットのひとつとなります。

連帯保証・信用保証の解除

表紙 (13)

つぎに、会社譲渡・事業承継をした際のオーナー様のメリットとして挙げられるものが、金融機関借入の信用保証解除となります。

会社・事業自体は利益が出ているものの、借入金の返済期間がまだ相当年残っており、金融機関借入の連帯保証人にオーナー様が加入されていらっしゃるケースが多く見受けられます。

オーナー様がご引退を考えられる年齢に差し掛かった段階でも10年単位の返済期間が残っており、オーナー様にご心労をかけているケースがあるのです。

もちろん、株式の全てを譲渡するのであれば、金融機関の返済義務も譲受先の会社様に移りますので、オーナー様は連帯保証人から解除されることが一般的となります。
※事業譲渡で、金融機関借入金以外の事業および資産を譲渡した場合は異なります。

金融機関借入からの連帯保証解除も、会社譲渡・事業承継の大きなメリットのひとつとなります。

会社・事業の存続

従業員

会社譲渡・事業承継をご検討されていらっしゃるオーナー様は、創業者利益や連帯保証の解除のことばかり考えていらっしゃる訳ではありません。

むしろ、長年支えてきた地域から自社が消えてしまうことの影響や、長年会社を支えてきてくれた従業員様の将来のことを想って、会社譲渡をご検討されるオーナー様が多くいらっしゃると感じております。

基本的に、譲渡先の会社様は同業の資本がより大きい会社様であったり、主要取引先様であったり、資金が潤沢な事業会社様/ファンド様であり、長年地域に貢献してきた自社を後世の残し、従業員様の将来を守るという想いを託せる会社様に譲渡をなさるオーナー様も多いです。

社長・従業員はどうなるのか

社長の待遇はどうなるのか、引退できないのか

question

会社譲渡を行ったら、現在の社長は必ず退任をしなければならないのでしょうか
こちらに関しましては、譲受先の企業様の方針によります

半年程度の引継ぎ期間を経て、新しい経営陣にて運営をしていこうとされる譲受先様もいらっしゃいますし、

現社長、現副社長に5-10年単位で継続勤務をご希望される譲受様もいらっしゃいます。
現代表は取締役として5年間勤務の後、ご引退。
そのほかの役員様は、譲渡時にご引退されるケースもあります。

経営陣の続投を計画されている場合は、最終契約書に、勤務期間、勤務中の役員報酬額、退職時の役員報酬額などを定め、譲渡条件の一部とすることも一般的です。

譲渡後の、ご勤務方針については、譲渡交渉の段階で譲受先様とよくお打ち合わせされるのがよいかと思います。

従業員の待遇はどうなるのか、リストラになるのか

worry

中小企業様の友好的な会社譲渡・事業承継の場合、
従業員さまのリストラは行わず、雇用条件は引継ぎとなるのが一般的かと思います。

株式の譲渡によって、会社譲渡を行う場合、現行の雇用契約がそのまま引き継ぎとなり、事業の切り出しによって、事業譲渡を行う場合は、従業員さまの雇用契約書を再度、譲受先企業さまと締結しなおすこととなります。

どちらのパターンにせよ、従業員さまの雇用条件は引継ぎとなる場合が多いです。

というのも、オーナー様が譲渡の際の懸念点として、従業員さまの雇用を挙げられることが多く、最終契約書に雇用引継ぎの条文の記載をご希望され、そのご希望通りに譲渡が実行されることが多いからです。

逆に、小規模な企業さまで、事業場のキーマンが譲渡の際にご退職をされ、譲渡実行が難しくなるケースもあります。

会社譲渡の流れ

ヒアリング・アドバイザリー契約締結

表紙 (5)

ここからは、実際に会社譲渡を行おうとされた際の手順の流れについて解説していきます。
会社譲渡・事業承継は手続きも複雑かつ大量であり、仲介会社に依頼しながら二人三脚で進めていかれるオーナー様が多いかと思いますので、仲介会社利用を前提として解説させて頂きます。

まず、どこかのM&A仲介会社にお問い合わせをして頂くと、面談日の設定後、担当者がオーナー様の会社までお伺いに来ることになります。

そこでは、今後、会社譲渡を円滑に進めていく為、
オーナー様のこれまでの事業運営についてお伺いしたり、
譲渡にあたってのご希望、事業内容、財務内容などヒアリングを行います。

依頼するM&A仲介会社を決定したら、依頼先の会社とアドバイザリー契約書の締結を行います。

アドバイザリー契約書には、M&A仲介会社が提供するサービス内容、報酬体系(*後述)などが記載されます。

アドバイザリー契約書を締結したら、依頼先の会社に、決算書など財務資料、事業資料の提出を求められますので、開示できる範囲で開示を行います。

開示頂いた資料を基に、M&A仲介会社が、事業概要書と呼ばれる譲受候補先企業への開示資料の作成を行います。

依頼先の会社が作成した、事業概要書の内容を確認して、譲受先候補企業さまの探索を開始します。

ネームクリア・資料開示

document (3)

M&A仲介会社が、作成する事業概要書には、
一般的に大きく分けて、

(1)Teaser/ノンネームシート
(2
)IM(インフォメーション・メモランダム)

の2種類の資料が存在し、
それぞれ、

(1)Teaser/ノンネームシート
→対象会社の事業内容、財務内容を特定できない範囲で記載したものです。
実名交渉前に、譲受候補先企業へ、仲介会社が、M&Aの打診を行うために使います。

(2)IM(インフォメーション・メモランダム)
→譲渡対象の会社や事業に関して詳細な情報を記載したものです。
会社名、財務内容、事業内容(製品名、サービス名など)、株主構成、希望価格、想定ストラクチャなどが記載されます。
Teaserやノンネームシート開示を経て、具体的に譲受を検討する段階に入った、譲受候補企業へ情報の開示を行うために使います。
開示前には、秘密保持契約書の締結と、オーナー様への開示意思確認(ネームクリアと呼ばれます)を行います。

開示許可を経た、譲受候補先企業さまへ、IM(インフォメーション・メモランダム)の開示を行い、M&A仲介会社が開示先企業さまの譲受に向けての意思確認を行っていきます。

トップ面談

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事業概要書の開示を経て、開示先が具体的な譲受検討に入った段階で、トップ面談を行います。

トップ面談とは、譲渡企業と譲受企業の経営者同士が、直接顔を合わせ行う面談のことです。
事業内容に関する疑問を解消したり、事業概要書では表現できない、経営者同士の人間性や、経営理念を相互に確認しあい、理解を深めあうための場となります。

会社譲渡・事業承継のプロセスにおいて、初めて、譲渡企業の意思決定者と、譲受企業の意思決定者が顔を合わせる場面であり、顔合わせの意味もありますが、譲渡実行後の方針のすり合わせができるか、企業文化がなじむかなどをお互いに確認しあう場でもあります。

場所は、譲渡先企業さまの社内で行うことが多いです。
トップ面談と同時に、譲渡企業さまの会社・事務所の雰囲気を見てもらう意味も含んでいます。

ただ、従業員さまがいない日が無いなど、情報漏洩の可能性を考えて、ホテルや貸会議室、M&A仲介会社のオフィスで行うケースもあります。

基本合意書締結

document (4)

トップ面談を経て、会社譲渡実行への方針、条件がおおまかに譲渡企業さまと譲受企業さまの間で固まった段階で、
基本合意書の締結を行います。

基本合意書とは、M&Aにおける、各当事者の認識・足並みを揃えるために作成する文章です。

基本合意書には、これから具体的に譲渡を検討していくこと、現在検討している価格(○○百万円-○○百万円の様に、レンジで記載されることが多いです)を記載し、追加で、

(1)デューデリジェンスを行える権利
(2)独占交渉権の付与


が盛り込まれることが多いです。

(1)デューデリジェンスを行える権利
→デューデリジェンス(専門家もしくは譲受企業専門チームによる、譲渡企業の財務面・法務面・事業面での調査のこと)(*詳細は後述)を実行し、最終的な譲受企業が提示する希望価格はデューデリジェンスの結果を踏まえ、決定とするケースが多く見受けられます。

(2)独占交渉権の付与
→デューデリジェンスを実行する際には、会計士や弁護士など各種専門家もしくは社内財務部や法務部といった専門チームを用いて実施することが多く、譲受先企業がそれなりにコストが支払うこととなるため、デューデリジェンス実施後、譲渡の可否が決定されるまでの一定期間は他の企業との譲渡交渉はしないという取り決めを交わすことが多いです。

基本合意書はあくまで、基本的に双方で合意した事項を確認するための書類で、法的拘束力はありません
(※もちろん、特約事項によって法的拘束力を持たせるケースも存在します。)

したがって、デューデリジェンスの結果、譲渡価格に変更が生じたり、譲渡実行が見送りになってしまった場合に、損害賠償請求を行うことは難しい場合が多いですが、とはいえ、基本合意書に記載された内容は、譲渡企業、譲受企業ともに交渉の拠り所となり、会社譲渡・事業承継を進めていくうえで重要な役割を持ちます。

DD(デューデリジェンス)

meeting (3)

DD(デューデリジェンス)とは、会社譲渡・事業承継を実行するにあたって、会計士・弁護士もしくは社内の財務部・法務部などの専門チームを用いて行う、対象会社への調査活動のことを指します

譲受企業が行い、財務・税務・法務など様々な観点から譲渡企業を調査し、譲渡実行に際しての、価格決定の根拠としたり、譲渡後のリスクの有無を確認の為に行います。

デューデリジェンスの目的は、

(1)企業価値の確認
(2)潜在的リスクの確認
(3)譲渡後の事業計画の為の情報収集
(4)経営陣含むキーマンとの方向性の擦り合わせ

などがあります。

(1)企業価値の確認
→基本合意書締結段階までは、譲渡価格は譲渡企業より提出された決算書などの財務資料を基に算定しており、財務資料の数値の正確性を確認するため、仕訳、各種台帳などの財務データの確認や、従業員さまへのインタビュー、管理会計数値の把握などを行い、譲受企業として提示できる希望譲受価格の算定根拠とします。

(2)潜在的リスクの確認
→譲渡後に訴訟や未払残業代問題もしくは、想定していなかったリスクが発生しない様、各種契約書の内容の確認や、従業員さまへのインタビュー、申告書などの税務資料の適正性などを確認します。
ここで発見もしくは懸念されたリスクは譲渡価格に反映、もしくは、最終契約書に表面保証事項として条文の追加交渉を行います。

(3)譲渡後の事業計画の為の情報収集
→譲受先企業としては、会社譲渡・事業承継を通じて、新たにシナジーの創出を見込んでいるケースが多く、将来的な事業計画を作成する為に、経営陣へのインタビュー、従業員さまへのインタビュー、現場見学、管理会計データの確認などを行うことが多いです。

(4)経営陣含むキーマンとの方向性の擦り合わせ
→譲渡後の、経営方針について、現経営陣と対話したり、事業上重要な役目を果たしているキーマンにインタビューを行います。

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡価格が決定したり、契約書の内容が決定する為、会社譲渡・事業承継のプロセスの中でも非常に重要なものとなります。

現地での調査対応や、ご用意頂く資料も膨大な数になるケースが多く、オーナー様にとっても一番、精神的・事務的にも負担がかかるプロセスになることが多いかと思います。

最終契約書締結

document (5)

デューデリジェンスを終了し、最終契約書に記載する内容の協議を終えて、実際に最終契約書の締結に入ります。

基本合意書の内容をベースに作成され、デューデリジェンスの結果を踏まえて、最終的な譲渡価格、譲渡の意思が決定した際に締結されます

基本合意書と異なり、法的拘束力を持つため、最終契約書の内容に違反すると損害賠償請求の対象となる可能性があります。

一般的な条項は以下の様なものが主となります。


(1)定義
(2)譲渡対象範囲及び譲渡価格の決定
(3)表面保証
(4)補償条項
(5)誓約事項
(6)前提条件
(7)解除条件
(8)協業避止義務
(9)その他条項


(1)定義

→最終契約書における用語の定義などを行います。


(2)譲渡対象範囲及び譲渡価格の決定

→事業譲渡の場合は、譲渡対象資産の特定を行います。
また、デューデリジェンスで決定した最終的な譲渡価格及び支払方法などを定めます。

(3)表面保証
→譲渡企業、譲受企業ともに、一定の事項が真実かつ正確であることを相手方当事者に対して表明し、保証することを定めます。
一般的に、最終契約書の締結日及びクロージングの日を基準日として、各種表面保証事項が真実かつ正確であることを表面保証します。

保証内容は、

・計算書類などの正確性
・簿外債務の不存在
・直近の決算書からの重要な変更の不存在
・法令などの遵守
・許認可など
・取引先との契約の継続性

などが盛り込まれます。

(4)補償事項
→契約当事者に最終契約書における表面保証違反、誓約事項違反またはその他の義務違反があった場合に相手方が被った損害を補償する旨を定めます。

(5)誓約事項
→会社譲渡に付随・関連して、各当事者が、相手方当事者に対して一定の行為をすること/しないことを約束した事項を定めます。

・善管注意義務
・禁止行為の決定
└定款の変更の禁止
└組織変更の禁止
└自己株式の取得の禁止
└資本金変更の禁止
└金融機関借入の追加借入の禁止

などが状況に応じて定められます。

(6)前提条件
→会社譲渡の最終契約書には、一定の事項を前提条件として定め、前提条件が満たされなかった場合、譲渡実行を延期又は、中断できる規定が定められることがあります。
一般的に、表面保証条項の正確性や、株式譲渡に関する株主総会、取締役会での譲渡承認、辞任役員の辞任届が提出されていることなどが定められます。

(7)解除条件
→契約の締結後、相手方の契約違反や契約締結の前提となっていた事実関係に変更が生じた場合には、契約を解除できる条項を定めることがあります。

(8)協業避止義務
→譲渡企業が譲渡した、事業と同じ事業を同じ、同地域で行わないことを定めることがあります。

(9)その他条項
→秘密保持に関する事項や、M&Aに関する事実を公表する場合の取り決め、各種費用の負担先、紛争が発生した際の合意裁判所などを別途、定めます。

最終契約書の締結が完了しましたら、クロージング日に譲渡実行、譲渡完了となります。

会社譲渡に係る費用

仲介会社手数料

bussiness

会社譲渡を実行するにあたって、オーナー様が負担する費用の中で大きなものがM&A仲介会社に支払う仲介手数料になるかと思います。

この章では、一般的なM&A仲介会社の料金体系について、解説していきます。

M&A仲介会社に依頼した際、3種類の報酬が発生する可能性があります。

(1)着手金
(2)中間金
(3)成功報酬

(1)着手金
→M&A仲介会社へ、正式な依頼を行った際に発生する費用のことです。
近年は着手金無料の仲介会社が増えてきていますが、発生する場合は、100万円-200万円程度が相場かと思います。

(2)中間金
→基本合意書締結段階で、発生する費用のことです。
M&A仲介会社によって、様々ですが、成功報酬額の20%程度が一般的な相場でしょうか。
もちろん、中間金無料の業者も多数存在しています。

(3)成功報酬
→最終契約書締結後に発生する報酬のことです。
着手金・中間金無料の業者は多数存在しますが、成功報酬に関しては、ほぼすべてのM&A仲介会社に依頼した場合に発生すると考えて頂いて問題ないです。

譲渡価格の数%(ただし、最低報酬○○百万円)という形態が一般的です。
最低報酬は、譲渡企業さまの規模感、M&A仲介会社にもよりますが、300万円-2,500万円程度のレンジで発生します。
譲渡価格に掛ける割合は、値段に応じて変動するテーブルを採用している会社が多く、レーマン・テーブルと呼ばれる料金テーブルを採用している会社が多いです。

取引金額が5億円までの部分:5%
取引金額が5億円を超え10億円までの部分:4%
取引金額が10億円を超え50億円までの部分:3%
取引金額が50億円を超え100億円までの部分:2%
取引金額が100億円を超える部分:1%

M&A仲介会社に依頼する際は、その会社の料金テーブルをよく確認することも重要になります。

司法書士報酬

cost

会社譲渡・事業承継を実行する際には、

・代表者変更登記
・各種定款変更登記(商号・目的・発行可能株式総数など)
・募集株式の発行

など各種登記事項が発生することがあり、
司法書士に依頼した場合は、登録免許税及び司法書士報酬が発生します。
報酬は内容により10万円~ですが、譲受先企業が全額負担するケースも数多く存在します。

これまで、会社譲渡・事業承継の手続きの流れとイメージを解説してきました。
安心して会社譲渡・事業承継を行うには、相性の良いM&A仲介会社に依頼することが重要になってきます。

弊社もM&A支援機関として、中小企業さまの会社譲渡・事業承継のご支援をさせて頂いておりますので、お気軽にお電話もしくはお問い合わせフォームよりご連絡頂けますと幸いです。

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